Notae ad Quartodecimani

情報や資料のノートの蓄積

イザヤ書に現われるシオンという女

元来、地名が女性名詞であるため、城市を載せる山、またエルサレムを指して「シオン」と呼ばれており、イザヤ書には47回「シオン」の語が存在する。
しかし、『シオンの子ら』また『シオンの娘』の母としての女シオンへの言及は40章以降に現れて来る。
その母親としての女は、イザヤ書中に九回語られている。
他の預言書も捜したが、今のところ同じ母親の意味を持つものを見ることはない。
したがって、このシオンという母なる女はイザヤ書の大きな特徴となる。

イザヤの預言書の終わりの部分の多くがこの女について語っており、それだけでも徒事ではない。しかし、世にこの女が十分に明らかにされた文書、あるいは相応しい関心を示された形跡も見ないのである。

やはり、この女は天のものではあり得ない。シオンは子らを生み、また乗せる母親であり、エルサレムの土台ではあっても、エルサレムそのものでもない。シオンは終末に至って別名で呼ばれ、いきなりに高められ、環境が整えられるときがくることをイザヤ書は予告している。つまり、シオンという女には零落の日々から、突然に喜びに沸く時が到来し、神YHWHが王として来られ、その住まいを再びシオン山上に定め、御名を置くという。それは帰還の子らを迎え、その子らは諸国を脱穀するほどのの王権を得るという。
それが地のものであるがゆえに、その重要度は極めて高いので、少しずつであっても出来る限り以下に詳細を記してゆこうと思う。



記載箇所
1.49:8-50:3
荒廃した地に街道ができてシオンの子らは集まり拡張を願う



2.51:1-3
 痛みと共にサラは次第に子らを産んでいった
 (この「サラ」は、実在した人物を象徴とする)



3.51:9-52:10
 請け戻された者が喜びつつシオンに来る



4.54:1-54:17
 子を産まなかった石女の子らは多くなり突き進む、その妻を一度退けた夫はYHWHであり、女を憐れんで請け戻し、飾られる
 <パウロが引用/ガラテア4:22->


5.60:1-60:22
 地を闇が覆うが、女(お前[f])にはYHWHが輝き諸国民はその光に向かう。女の息子たちは集められ、諸国民の資産と共に運ばれてくる。銅に替えて金が、鉄に替えて銀が、つまり平和と義が携え入れられる。
 巣箱に向かう雲のような鳩たちが女の子らと金銀を運んでくる。
 太陽は沈まず、月は欠けない。その民は永久に地を所有し、小さなものが強い国となる。
 <ヨハネが暗示/黙示録12:1->



6.62:1-12
 女はヘフツィヴァまたベエラと呼ばれ、もはや捨てられた女とは呼ばれない。諸国民はあなた(女)の義を見、新しい名で呼ばれる
 [חֶפְצִי־בָ֔הּ] 「我が喜びである女」、 [בְּעוּלָ֑ה] 「夫ある者」、[ עֲזוּבָ֗ה] 捨てられた女(オツベー)
 (女に)『街道を作って諸国民の旗印となれ』 
 彼ら(娘ら)は『聖なる民、YHWHに贖われた者』=(聖徒)と呼ばれ
 あなたは『あなたは尋ね求められる女、捨てられることのない都』(信徒)と呼ばれる


7.64:10-12
 イザヤの発言「シオンは荒野となった。あなた(神)は動かないのですか」?



8.65:18-25
 私(YHWH)を呼び求めなかった民に「わたしはここに居る」と言う。
 私はあなたがたを死に至らせるが、我が僕は別の名で呼ぶ 
 (注意![あなたがた]=神の誓いのために神名を保存する者ら[僕ら]とは別物Ps:22:22)
 <『キリストへの死のバプテスマ』Rm6:3-4>
 私はエルサレムを民の歓喜となるよう創造している、そこに悲しみはない⇒以下千年期の描写が続く
エルサレムの民』<Zec14:5が関係するかも>
 <関連/ルカ21:24>



9.66:6-24
 シオンが僅かな陣痛と共に国民を生み出した
 国民が一時に誕生するか
 エルサレムを愛する者は益を得るが、敵を神は糾弾する
 わたし(神)は彼ら*の中に印を置き、逃れた者を諸国民に遣わす。すると、わたしの栄光を聞いた諸国民はあなたがたの兄弟を早馬やラクダに乗せてエルサレムに連れて来る。
 *「彼ら」はおそらく聖徒ではないらしい


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以上の言葉は、ユダヤイスラエルの捕囚の終わりの時期に十分成就したとは思えない。


それゆえ、より的確に当てはまり、且つより大きな本来の成就は未だ起きていないであろう。

しかも、この意味するところは相当に重大で、「世の裁き」に関わることになる。


女シオンについての記述は専らイザヤ書後半に集中しており、詩篇では87・128・129・132に幾らか似た概念を見るくらいでしかない。
エレミヤは、荒れ廃れるシオンとバビロンへの復讐が主要な言及であり、エゼキエルに至ってはシオンという言葉も出てこない。

      • 小預言書---------------

ヨエル2:1シオンでショファールを!→蝗害へ 2:15シオンでショファールを吹奏せよ!→聖なる全集会を召集へ 2:23シオンの子らよ→降雨あり 2:32シオンの山とエルサレムに残った者が呼び出される
3:16シオンからYHWHは→天地の激動 聖なる山エルサレムに住む→聖なる処となる

オバデヤ17 シオンに逃れた者が来る→必ず聖なる処となる

ミカ4:2律法はシオンからYHWHの言葉はエルサレムから←YHWHの家は高く上げられる 4:7YHWHはシオンで治める (4:8牧場の塔、シオンの娘の高台→かつての支配エルサレムの娘の属する王国は来る 4:10シオンの娘よ苦痛に呻け→バビロン迄来て救われる 4:13シオンの娘よ脱穀を行え)

ゼパニヤ3:16シオンよ恐れてはいけない→YHWHはあなたの中に居る

ゼカリヤ1:14シオンを嫉妬する→わたしはエルサレムに戻る 1:17シオンを悔やみ再びエルサレムを選び取る 2:7シオンよ、バビロンの娘と住む者よ逃げて来い(2:10シオンの娘よ、わたしはあなたの内に住む)8:1シオンを嫉妬する8:3シオンに帰る(9:9シオンの娘よ、あなたの元に王が来る)9:13シオンよ、わたしはあなたの子らを目覚めさせる


                                                                                                • -

 ⇒ 「シオンの栄光を告げる句

・論考
 ⇒ 「シオンの娘の謎を解く


 「女シオン」と「シオンの娘」また「シオンの子ら」は二種類の別のものを指している。
 預言書の中で、両者は慎重と言えるほど意味を分けて描かれる。
 遺産の相続者は権能を持つことになるが、母親はそれに預からない。
 それでも母親も世に印となるらしく、相当な栄誉を諸国民から受けることになる。
 それは『諸国民が流れのように向かう』先としてのシオンの山という受け皿と思われる。
 シオンは早くから目ざめ、子らと夫YHWHを迎える。
 ⇒ 『母体

 我が正直な感想:「これはエラいことになった」
まず、黙示録講解で12章が不十分になり先に進めない⇒娘らの活動中荒野に保護される女
 ひょっとすると、neutral viewpoint を保つつもりが、自分に関わる事柄に行き当たったのかも・・
 これがどれほど途轍もない事かを人に分かってもらえるか?
















但し、これらの理解は地上のエルサレムを立てる将来の不法の人に悪用される危険が高い。なぜなら、既にユダヤ教キリスト教の内部にその胎動があり、神の意志に無頓着な聖書研究者を自認する多くの人々が地上のエルサレム攻撃を予想して憚らないから
そこに三一と地上再臨説が加われば終末の偶像崇拝が完成されてしまう。大いなるバビロンの滅びよりは、こちらの方がよほど人類に与える害は破滅的であり、この世の滅びを呼び込むことになるのだろう
誰が正しいとか、どこの教会とか宗派とか言っている場合でない。本来キリスト教徒なら、また信じる人には共通認識が要る。





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