Notae ad Quartodecimani

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ダニエル第八章11節 「天の軍勢」

ダニエル8:8~12

【新改訳】

 8:8 この雄やぎは、非常に高ぶったが、その強くなったときに、あの大きな角が折れた。そしてその代わりに、天の四方に向かって、著しく目だつ四本の角が生え出た。
 8:9 そのうちの一本の角から、また一本の小さな角が芽を出して、南と、東と、麗しい国とに向かって、非常に大きくなっていった。
 8:10 それは大きくなって、天の軍勢に達し、星の軍勢のうちの幾つかを地に落として、これを踏みにじり、
 8:11 軍勢の長にまでのし上がった。それによって、常供のささげ物は取り上げられ、その聖所の基はくつがえされる。
 8:12 軍勢は渡され、常供のささげ物に代えてそむきの罪がささげられた。その角は真理を地に投げ捨て、ほしいままにふるまって、それを成し遂げた。

 

以上の新改訳では

やぎから現れる四本の角の中から更に出る角が、勢いを増して大きくなった結果として、天軍の長にまで栄達したかのように捉える。

以下【NKJV】原因はTyndaleか?

8:8 Therefore the male goat grew very great; but when he became strong, the large horn was broken, and in place of it four notable ones came up toward the four winds of heaven.
 8:9 And out of one of them came a little horn which grew exceedingly great toward the south, toward the east, and toward the Glorious Land.
 8:10 And it grew up to the host of heaven; and it cast down some of the host and some of the stars to the ground, and trampled them.
 8:11 He even exalted himself as high as the Prince of the host; and by him the daily sacrifices were taken away, and the place of His sanctuary was cast down.

 

しかし・・

【新共同訳】

 8:8 雄山羊は非常に尊大になったが、力の極みで角は折れ、その代わりに四本の際立った角が生えて天の四方に向かった。
 8:9 そのうちの一本からもう一本の小さな角が生え出て、非常に強大になり、南へ、東へ、更にあの「麗しの地」へと力を伸ばした。
 8:10 これは天の万軍に及ぶまで力を伸ばし、その万軍、つまり星のうちの幾つかを地に投げ落とし、踏みにじった。
 8:11 その上、天の万軍の長にまで力を伸ばし、日ごとの供え物を廃し、その聖所を倒した。
 8:12 また、天の万軍を供え物と共に打ち倒して罪をはびこらせ、真理を地になげうち、思うままにふるまった。

 

【口語訳】

 8:8 こうして、その雄やぎは、はなはだしく高ぶったが、その盛んになった時、あの大きな角が折れて、その代りに四つの著しい角が生じ、天の四方に向かった。
 8:9 その角の一つから、一つの小さい角が出て、南に向かい、東に向かい、麗しい地に向かって、はなはだしく大きくなり、
 8:10 天の衆群に及ぶまでに大きくなり、星の衆群のうちの数個を地に投げ下して、これを踏みつけ、
 8:11 またみずから高ぶって、その衆群の主に敵し、その常供の燔祭を取り除き、かつその聖所を倒した。
 8:12 そしてその衆群は、罪によって、常供の燔祭と共に、これにわたされた。その角はまた真理を地に投げうち、ほしいままにふるまって、みずから栄えた。

 

新共同訳と口語訳とは、四本の角の一つから更に現れる角が、天軍の長または主に敵対するまでに権勢が伸張するという意味に訳している。その結果として聖域が倒れる

 

BHS

8
וּצְפִ֥יר הָעִזִּ֖ים הִגְדִּ֣יל עַד־מְאֹ֑ד וּכְעָצְמֹ֗ו נִשְׁבְּרָה֙ הַקֶּ֣רֶן הַגְּדֹולָ֔ה וַֽתַּעֲלֶ֜נָה חָז֤וּת אַרְבַּע֙ תַּחְתֶּ֔יהָ לְאַרְבַּ֖ע רוּחֹ֥ות הַשָּׁמָֽיִם׃

9
וּמִן־הָאַחַ֣ת מֵהֶ֔ם יָצָ֥א קֶֽרֶן־אַחַ֖ת מִצְּעִירָ֑ה וַתִּגְדַּל־יֶ֛תֶר אֶל־הַנֶּ֥גֶב וְאֶל־הַמִּזְרָ֖ח וְאֶל־הַצֶּֽבִי׃

10
וַתִּגְדַּ֖ל עַד־צְבָ֣א הַשָּׁמָ֑יִם וַתַּפֵּ֥ל אַ֛רְצָה מִן־הַצָּבָ֥א וּמִן־הַכֹּוכָבִ֖ים וַֽתִּרְמְסֵֽם׃

11
וְעַ֥ד שַֽׂר־הַצָּבָ֖א הִגְדִּ֑יל וּמִמֶּ֨נּוּ֙ הֵרִים הַתָּמִ֔יד וְהֻשְׁלַ֖ךְ מְכֹ֥ון מִקְדָּשֹֽׁו׃

12
וְצָבָ֛א תִּנָּתֵ֥ן עַל־הַתָּמִ֖יד בְּפָ֑שַׁע וְתַשְׁלֵ֤ךְ אֱמֶת֙ אַ֔רְצָה וְעָשְׂתָ֖ה וְהִצְלִֽיחָה׃

 

特に11節

וְעַ֥ד  שַֽׂר־הַצָּבָ֖א  הִגְדִּ֑יל  וּמִמֶּ֨נּוּ֙  הֵרִים  הַתָּמִ֔יד  וְהֻשְׁלַ֖ךְ  מְכֹ֥ון  מִקְדָּשֹֽׁו׃

そして・・まで 司令官 彼自身大きくなった 彼は騙し 騙し 続けざまに それで倒れた その聖域の側

 

ヘブライ語の単語の曖昧さに翻訳同士の離開の原因があり、訳者の解釈がどうしても出てしまう例

だが12節ではこの内容の結果として天軍はその常供の犠牲と共に倒されていることが補足されている

 

LXX

8καὶ ὁ τράγος τῶν αἰγῶν κατίσχυσε σφόδρα, καὶ ὅτε κατίσχυσε, συνετρίβη αὐτοῦ τὸ κέρας τὸ μέγα, καὶ ἀνέβη ἕτερα τέσσαρα κέρατα κατόπισθεν αὐτοῦ εἰς τοὺς τέσσαρας ἀνέμους τοῦ οὐρανοῦ.

9καὶ ἐξ ἑνὸς αὐτῶν ἀνεφύη κέρας ἰσχυρὸν ἓν καὶ κατίσχυσε καὶ ἐπάταξεν ἐπὶ μεσημβρίαν καὶ ἐπ᾽ ἀνατολὰς καὶ ἐπὶ βορρᾶν·

10καὶ ὑψώθη ἕως τῶν ἀστέρων τοῦ οὐρανοῦ, καὶ ἐρράχθη ἐπὶ τὴν γῆν ἀπὸ τῶν ἀστέρων καὶ ἀπὸ αὐτῶν κατεπατήθη,

11ἕως ὁ ἀρχιστράτηγος ῥύσεται τὴν αἰχμαλωσίαν, καὶ δι᾽ αὐτὸν τὰ ὄρη τὰ ἀπ᾽ αἰῶνος ἐρράχθη, καὶ ἐξήρθη ὁ τόπος αὐτῶν καὶ θυσία, καὶ ἔθηκεν αὐτὴν ἕως χαμαὶ ἐπὶ τὴν γῆν καὶ εὐωδώθη καὶ ἐγενήθη, καὶ τὸ ἅγιον ἐρημωθήσεται·

12καὶ ἐγενήθησαν ἐπὶ τῇ θυσίᾳ αἱ ἁμαρτίαι, καὶ ἐρρίφη χαμαὶ ἡ δικαιοσύνη, καὶ ἐποίησε καὶ εὐωδώθη. 

(便宜的に改行)

10.そして天の星(群)にまで上り[ὑψώθη](elevation, height,)、幾つか星が地に落とされ、彼(ら)によって踏み躙られた

11.将軍(軍の君)がとらえられ、そして彼のための古来の山が取り壊され、そして彼らの場所(軍団)と犠牲が取り除かれ、そして 聖(所)が捨てられるまで

11節が異様に長く訳よりも説明に近いように見える.

やはりTyndaleが先鞭をつけたとはいえ新改訳の「のし上がり」というのはLXXでのユダヤ人の判断からするとフライング的な意訳になる。

 

LXXにもいろいろあるだろうが、前1世紀以前でもエピファネスの暴挙とシリアの退潮、それに応じたハスモン家の支配の経験が有った上での翻訳となれば、この辺りのギリシア語訳にそれが現れている蓋然性がある。(だから11節が長い?何か註解は無いか?)

 

◆この部分での三つの登場者

1.四本の角の一つから出る角

アンティオコスⅣ世エピファネス予型として暗示する

四本の角とはディアドコイ戦争により四分されたヘレニズム世界を指す

エジプト・アシア・ギリシアマケドニア・シリア以東の四強国家

リア王エピファネスはモーセの契約に対して著しい反対行動を起こしたので、終末に神に逆らう覇権者として予型を荷う

 

2.天軍

天からの支配を荷うことになる聖徒の民

彼らは『地から選ばれる』ため、地上に居る間には権力を持たず無防備である

そのため地上の為政者からの攻撃に曝され、そこで幾らかの者が脱落し『天軍の幾らかが落とされる』⇒黙示録12の『天の星の三分の一』を見直すべきか?

彼らは地上で聖霊により聖なる常供の犠牲を捧げるが、覇権を持つ新たな角から攻撃を受け、その崇拝と共に退けられる 

*「賛美のために創造した民」・「賛美の雄牛を捧げよう」・「賛美するようにして下さった」

 

3.軍の君

聖徒らの天軍の指導者であり、新しい崇拝を地上の聖徒らに行わせていた再臨のキリストであるが、地上の聖徒らを攻撃されることにより、新たな角の反対行動の影響を受ける

 

ここでもう一つ注意するべき要素「罪」[פָ שַׁ ע ] がある

新改訳では「そむきの罪」とされている。

この「ペシャ」は、普通に言う「罪」[חטא](sin,wrong)と異なり(felony,transgression)の意味を含む。

これを犯すのは角とは言えない。なぜなら、それが角の悪であるならわざわざ言及するまでもないからで、角以外の何者かの罪、「背きの罪」といえる。「背き」には裏切り(transgression)の概念がある。

これを補足するのがダニエル第11章でエピファネスが再登場する場面であり、そこでは

『 11:30 キティムの船が彼に立ち向かって来るので、彼は落胆して引き返し、聖なる契約にいきりたち、ほしいままにふるまう。彼は帰って行って、その聖なる契約を捨てた者たちを重く取り立てるようになる。
 11:31 彼の軍隊は立ち上がり、聖所ととりでを汚し、常供のささげ物を取り除き、荒らす忌むべきものを据える。
 11:32 彼は契約を犯す者たちを巧言をもって堕落させるが、自分の神を知る人たちは、堅く立って事を行う。
 11:33 民の中の思慮深い人たちは、多くの人を悟らせる。彼らは、長い間、剣にかかり、火に焼かれ、とりことなり、かすめ奪われて倒れる。
 11:34 彼らが倒れるとき、彼らへの助けは少ないが、多くの人は、巧言を使って思慮深い人につく。』【新改訳】

そこでの「契約を犯す(離れる)者ら」とは、エピファネスの当時であればユダヤ人でありながらヘレニズム化を推進しシリア側に着いた者らの事であり、終末には聖徒でありながら北の王の側に着き、反宗教の政策に同調する者を指すに違いない。『新しい契約』もモーセに同じく「神との契約」であるから。

 

したがって、ダニエル第八章の天軍とは、彼らの『市民権が天にある』新しい契約に参与する聖霊注がれる民以外に無い

彼らが地上で壊滅するのは『背きの罪』によるのであり、それはユダ・イスカリオテによってキリストが屠られた事柄の再演であることを表している。

キリストが再三、仲間内での軋轢や裏切りがあり、家族親族と雖も信頼できぬ事態にまで立ち至るとしても動揺せぬよう予め訓話を行っている。

だが、この一連の出来事と彼らの滅びは『必要であった』事であり、聖徒の『練り清め』のためとなる。

<そして神はこの件を以って、いよいよ終末最大の異兆を示すことになる>

オバデヤ

 

*やはり聖徒理解が無ければここも意味が通じない

それでも大半の「クリスチャン」はこの事を歯牙にもかけないのだろう

聖徒理解が無いと、似てはいても預言を反対に解釈することになる

しかも、その方がウケがいい

もう趨勢が見えている

シオンは現れてもほんの少数か?

今はこの世の本当の片隅でこう書くだけのこと

自分が間違っているなら、はやくそれを悟りたい

自分自身にニュートラルで居られるように